第1章

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「リューマはそもそも軽いヤツなんだから、頑固モノのミユキにはうまく操縦できないだろ」 「頑固頑固って、ウルサイよ! リューマは軽くない。そうじゃなくって……」 ヨシの投げてくる言葉にイライラしながら 唇を尖らせて反抗する。 誘惑が多い夫の操縦なんてムリ。 信じたら傷つくだけ…… 「ふーん。だったら、いつまでも、リューマの事で傷ついていれば? いつか自爆しないようにな」 ヨシは意地悪な眼差しで私を見下ろす。 もう自爆寸前だから、あとは壊れてしまうだけ。 リューマが私に対してどうゆう態度をこれから取るのか 朝帰りのワケを…… 里奈さんの香水の意味を…… 知った時、私はどうするのか…… 自滅はもうそれ次第。 でも、 私はもう 今朝リューマを突き放したんだ。 『愛してる』って言われても 連絡もしないで朝帰りする夫を信じる事なんて出来ない。 「おい……泣くなよ」 ヨシが眉を寄せて 困惑した表情をして私の顔を覗き込んだ。 いつの間にか涙がホロホロと頬を伝っている。 「……ごめん。言い過ぎた」 ヨシは自己嫌悪してる様子で私を見つめる。 違う……。 ヨシの言葉で傷ついたんじゃない。 もし、リューマが里奈さんと何かあった事実があるなら 私、もうリューマを許せないかもしれない。 そう自覚したら 呼吸をするのも苦しくなった。 「リューマを選んだのはミユキなんだよ。 どんなリューマでも受け入れる度胸があったから結婚したんだろ?」 「うん……」 でも、もう自信がない……。 相川さんの事件の時も、 里奈さんの香水も、 次から次に心配事が襲ってきて 心休まる時がない。
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