第1章

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涙が溢れ出したら止まらなくて しゃっくりまで出てきた。 「う……っ……ひっく」 リューマとこれからうまくやっていける自信がなくて 不安が襲ってきては 同時に涙が溢れてくる。 昨夜、あんなに泣いたのに まだこんなに泣けるなんて 涙腺って崩壊したらしばらくは修復できないものなんだろうか。 ヨシが 泣き止まない私を持て余すように 私の頭をずっと撫でている。 ヨシの大きな優しい手が 次第に安堵感を与えてくれる。 「とりあえず、飲んで忘れな」 いつの間に注文したのか 3杯目のレモンハイが目の前に置かれた。 「え……明日……仕事だ……し、もう……帰る」 涙を抑えようと目の奥をグッと力を入れながら 鼻をすすって頭を横に振った。 こんなに人前で泣くなんて いい大人が 恥ずかしい……。 「明日はオレが仕事フォローするから安心して」 そう諭されて 私は3杯目を手に取ってしまった。 飲んで忘れる事ができるなら このモヤモヤした苦しさから 開放されるなら お酒に頼りたい。 飲んでいくうちに ホワッとアルコールが体内に浸透していくのを感じて 涙もやっと止まった。 気持ちが落ち着いてきた頃には 4杯目のレモンハイを喉に流し込んでいた。 「ミユキ、リューマに対しては従順なのに、オレには悪態ばっかついてたよなー」 「……そう? ヨシがお兄さんみたいだから、自然に自が出ちゃうのかも」 「お兄さんって……。ミユキはお兄さんとセックスするのかよ」 ヨシが急に不機嫌な声になって 私の髪に触れてグシャリと掻き回した。 「ちょっ……やめてよ」 「ムカつくんだよ」 「なにが?」 「分かってないところがムカつくってーの!」 さっきまで優しかった手が今は不快感を与えてくる。 髪をエアリーにセットしてたのに、 もうグチャグチャだ。 「ああ、もうやめて!」 「やめない」 ヨシは髪をグチャグチャに掻き回すと 私の後頭部を掴んで引き寄せた。 立ち呑み屋で 横並びで並んで立っているヨシと私。 バランスを崩して ヨシの胸の中に倒れ込むと 自分の頬がヨシの胸に当たった。 リューマと同じブルガリのムスクの香り。 またリューマを思い出して ジンワリ涙が滲んでしまった。
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