第1章

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「さむ……」 寒気を感じて、小さく身震いしながら居眠りから目を覚ます。 まだ春先の3月中旬。 エアコンも点けずにソファでいつの間にか眠ってしまっていた。 ………なんか 夢見ていたけど忘れた。 ってか、今何時? 時刻を見れば、もう9時半。 ミユキが帰って来ない……。 ミユキのサロン、7時半には終わるハズなんだけどな。 何やってんだろ? ………きっとミユキも同じ思いで昨夜オレを待っていたんだろうな。 いつ帰って来るか分からないってゆーのは 落ち着かないものなんだな。 「…………」 オレはパソコンを立ち上げ、これからのスケジュールを確認しようと、 近日中にしておかなければいけない事を整理する事にした。 里奈のブランドを不動のものにしてしまえば それをサポートする事で、オレの収入は安定する。 百貨店にも進出してアパレル業界で不動のブランドになってしまえば 幅広いユーザーを獲得できる。 近々あるサマーコレクションの演出プロデュースもそろそろ本腰入れていかなきゃな。 コレクションを成功させてバイヤーとの商談を結実させる。 クライアントはそればかりをオレに要求してくるのだから。 「…………」 サマコレのプロデュースを構想していると、いつの間にか時間が経過していて はたと気付くと 時刻は11時。 「………………」 いくらなんでも遅いだろ。 まさか、帰って来ないって事はないよな? 夫婦喧嘩の末にある “実家に帰らせて頂きます“ 的な? 「まさか、そんなワケないか。ミユキの実家は千葉の奥地だし」 サロンはここから電車で10分ほど。 何やってんだよ…… 次第にイライラは募っていく。 イライラを打ち消そうと、パソコンの画面を睨みながらサマコレの構想を練る事に集中した。 「…………」 11時半を過ぎた頃 玄関のドアが開く音がした。 ………やっとミユキが帰ってきた。 どんな顔してミユキと顔合わせようか、わずかな緊張が走る。 なんせ 朝あんなにミユキを泣かせて、 オレは出て行ったのだから。
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