第1章

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「ずっとこうやって触れてみたかったの……」 里奈は唇を離しても、 細い華奢な腕をオレの首に巻きつけたまま、オレの胸に顔をうずめた。 里奈の甘いフローラルの香り。 なんだろ……この香水……脳が痺れていく感じ。 ミユキは香水をつけないから 香りが敏感に鼻につく。 いつも里奈がつけてるのは分かってたけど こんなに香りを強く感じた事はなかった。 ……というか、今までこんなに体を密着させた事なんてない。 オレは里奈の行動に戸惑いを覚えつつ 腕をやんわり振りほどく。 「言ってる意味、分かってんの? こんな事オレにしちゃいけないだろ、 里奈?」 オレに好意を持っているのは感じていたけど こんな風にされた事はなかった。 ……里奈の頬を触れた時に 里奈の瞳が熱帯びたのを感じて ヤバイって感じたけど。 こんな風にキスを仕掛けられるなんて 思いもしなかった。 オレはきちんと一線を引いていたつもりだったんだけどな。 里奈は‥…… セックス依存症だ。 里奈は‥…… ナオトだけじゃなくヒロキとも関係を持っていた。 モデルと躰を合わせる里奈は 特定の交際相手は作らずに 夜だけの相手を得るだけで満足していたみたいだけど 不特定多数はトラブルの元。 現にナオトともこんなんだし。 ヒロキには彼女がいるから割りきった関係だったんだろうけど、 ナオトは真剣に里奈の事が好きだったんだろうな。 色んな恋愛観、セックス観があるから、 別に、里奈の性癖に偏見を持つ事はなかったけど 仕事に影響が出てきてしまった今、 どうにかしないと トラブルが 里奈の首を絞める。 「里奈さ、そうゆうのそろそろ辞めたら? ちゃんと恋人つくりなよ」 オレはあくまでも、里奈の事を思ってアドバイスしたんだけど 里奈は哀しい表情を浮かべて、 オレから視線を逸らし、 顔にかかっている前髪を無造作にかき上げた。 いつも上げてる髪を下ろしてる里奈はすごくセクシーだ。 ‥……でも それも 男を落とす武器なんだろう。 里奈は自覚ないんだろうけど。
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