第1章

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……眠い。 ほとんど寝ていない状態で しかも、ミユキとあんな事があって気分が落ちてる状態で 里奈のRipshのショップの開店セレモニーはスタートした。 Ripshのブランドを知らないお客様に、 トレンドのポイントを押さえたコーディネートアドバイスを、店内に設置されたミニステージで店長の池谷さんと一緒にレクチャーする。 店内はお客様でごった返していて、お客さまは あまりまだ浸透していないブランドRipshの服を手にしては、自分にあてがっていた。 ……人に酔いそう…… 店内を回るにも人を避けて歩くのが大変なくらいだ。 「ルイさん!」 昔のファンから呼び止められて、オススメのコーディネートを尋ねられる。 「ルイさんのセンスが活かされてるブランドですよね!デザイナーになられたから芸能界を辞められたんですか?」 20代そこそこのアメカジファッションの男性がレポーターのように訊いてきた。 あ……めんどくせー勘違いだな…… 「いやいや、僕はデザイナーじゃないですよ。着る専門です」 「えっ? ルイさんのブランドだと思ってましたよー、なんだー違うのかー」 オレのファンだというお客さまは 驚い様子と残念そうな声音で服を広げてマジマジと見ていた。 引き続き店内をコーディネートのアドバイスに回ってると、広告代理のスタッフに呼び止められた。 「お客さまには、リューマさんがデザイナーって事で勘違いされたままの方がいいんじゃないんですか? 里奈さんとご夫婦なら、同じようなもんでしょう」 「…………」 だから、夫婦じゃないんだってば。 「あのう、どこから回った情報かは知りませんが、オレと里奈は夫婦でも恋人でもありませんよ。オレはブランドをサポートしているだけの人間です」 オレが苦笑しながらそう告げると 広告代理の企画スタッフは、眉根を寄せて言った。 「そんな事実はここには関係ないですよ。 リューマさんのブランドって事でお客さまに認識してもらった方がユーザーは増えますから」 ……なんだそれ。 「Ripshのデビューのキッカケはリューマさんでしたよね?」 ……確かに そうだけど。 てゆーか、それって 里奈の存在意義がないだろ……
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