第1章

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お昼を回った頃、 店内にヒロキの姿を見つける。 思わず、ヒロキの肩をつかんで詰め寄った。 「ヒロキ!昨日は仮病使って打ち合わせバックレやがって。」 ヒロキはオレに勢いよく肩を捕まれて、 驚いた様子でオレを仰ぎ見ると、バツが悪そうな笑顔を浮かべた。 「ワリイ。ナオトに名一杯飲まされて、久々に壊れちゃってさ、打ち合わせどころじゃなかった」 悪びれた様子もなくそう言ってのけたヒロキにイラッと目眩を感じる。 ナオトのやろーも確信犯だな。 おまえらのせいで、ミユキに愛想尽かされたっつーの。 朝、スマホのアラームで目が覚めて 眠っているミユキにキスしようとした時に 目に飛び込んできた ミユキの腫れた瞼。 頬に残っていた涙の跡。 しかも、眠っていると思ったら 一睡もしていないような顔をしていた。 その様子を目の当たりにした時に感じた鈍い胸の痛み。 ミユキは一晩中オレを待っていた。 あのミユキの顔は きっとずっと忘れる事はないくらい オレには衝撃だった。 「今日は完全復活したから、リューマ、バトンタッチ! オレのせいでリューマが寝不足だから、代わってやれって里奈さんから連絡きたから。 後はオレに任せた!」 調子がいいヒロキを睨みながら、とりあえず引き継ぎをしてオレは退散する事にした。 もう、いい加減、家でゆっくりしたかった。 ほとんど最近眠れてないし 今朝もミユキと散々だし 早く家に帰って 罪滅ぼしにオレが腕を振るって夕飯でも、作ろう。 そしてミユキと一緒に食事をしよう。 そう決めて、 オレはさっさと帰路についた。
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