序幕

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今日も退屈な仕事を終えて、いつものバーに足を運ぶ 少しけだるい熱を帯びた足を運ぶ 別に、退屈だからといって、今の仕事が嫌いな訳じゃない 上司は、私に良くしてくれるし、同僚との仲だって悪くない そう考えてみると、他の職場よりもずっと恵まれていると思う 何が気に入らないって訳じゃない ただ、疲れているから、そんな風に思うだけだと思うけれど 何となく腑に落ちないような気分になっている 木目調の少し重たい扉を開くと、見付けられないベルが、チリンとなった このバーは、客が少ない というよりも、私が訪れた時に客がいるのを、見たことがない 夜遅い時間だからなのかもしれないが しかし、その静かな雰囲気が私は好きだ 元来、騒がしいのがあまり得意ではない私に、そのバーの雰囲気は居心地が良かった しかし、今日は珍しく先客がいたようだ いつも私が座る一番奥のカウンター席に座っていた その事に、少し不満を感じながらも、何故か、その先客に興味を引かれた どうして、そんな事になったのか分からないが、きっと魔が差したのだと思う
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