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「それで、話の続きなのですが、ピエロとクラウンは違うんですよ」
「…同じものだと思ってました」
「大抵の人間は、ピエロもクラウンも同じもの、だと考えている
…だけど、道化師にも沢山の種類がありましてね
クラウンは、おどけ者として笑われる
そしてピエロは、それよりも更に下の分際でね」
「…貴方は、サーカスか何かで働いていた事があるのですか?」
男は答えない
「ピエロとクラウンを見分ける、目印は涙です
大粒の涙」
男は目元を指して笑った
「ピエロが泣いているのですか?」
「ピエロはいつも下っ端で、馬鹿にされて笑われるのが仕事です
でも、人間だ
時々寂しくなる
だから、化粧の中に本心を塗り込める
‘誰か私を愛してください’」
最後の言葉は、ピエロの本心と言うよりも、むしろ男の本心だと思った
「…おや、雨が降ってきましたね」
「本当だ」
耳を澄ませると、外では雨の降る透き通った音、それでいて酷く不透明な音が絶え間無くなっていた
「どうせこの雨じゃ、家には帰れないでしょう
どうです?
時間を潰すにはもってこいの与太話があるんですが」
「…お願いします」
男は、バーの雰囲気にそぐわない、おどけた笑顔で語りだした
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