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【ふざけてない】前のページの続き
「医務室、か? 俺は……生きて」
稲嶺を殺して、それから。右手の能力が急激に高まって、自分では制御できなくなって。そこからは全く頭が働かない。わかるのは、自分にもう右腕がないことくらいだ。
「やっほー、清太郎さん」
自分のすぐ横から声が聞こえ、浅間は振り返った。そこには右肘から下が切断された団長がへらへらと笑っている。
「ふざけてんのか」
「ふざけてないよー、なにさいきなり」
浅間はベッドから降りて左手で団長の胸ぐらを掴みあげる。しかし団長の表情は変わらず、代わりに首から下げたリングが小さく揺れた。
「清太郎さん言ったでしょ。この能力なら一瞬だって。全然痛くなかったよ、あの能力。だからね、今まで死んでいった人たちも苦しんでなんかないよ」
その言葉に、浅間は力が抜けたように座り込んだ。ふざけんなよ、と小さく呟きが聞こえたので団長はまた「ふざけてないよ」と返した。
「……やあ、通してくれる? 三十年来の友人なんだ。なあに大丈夫、彼はもうあの能力は使えないからさ」
「すまないな。医療班長には話を通してある」
聞き覚えがある声が二つ近づいてくる。浅間は静かにベッドに腰掛けて彼らを待った。
「……やあ、調子はどう――」
顔を出した荻野が言い終わるか終わらないかわからないうちに垣内の右拳が浅間の右頬を殴り飛ばした。ぎょっとする荻野と、あわあわする団長。
「ちょっと善ちゃん、ここ医務室だしこいつ怪我人だから! なに思いっきりぶん殴って――」
荻野の声を遮るように「なんだよ、言いてえことがあるなら口で喋れよ」と垣内を睨みつける浅間。煽ってんじゃないよ浅間も!と声を小さくして怒る荻野の言葉は誰の耳にも入っていないようだ。
「何故死のうとしてる。あの醜態は何だ。何故そうなるまで頼ってくれなかった。お前もだ荻野」
「へぇあ!? 僕も!? ええ……? 善ちゃん真っ直ぐでこう、光ばかりでできてるイメージで……」
自分に話が振られるとは思ってなかったのか、荻野は奇声を発しつつもごもごと言い訳を並び立てる。
「何だそれは。自分が闇とでも言うつもりか? 馬鹿馬鹿しい、そういうのは中学生で卒業しとけ」
「うわあなんか腹立つぅ……」
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区切り悪いけど文字数があれなので
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