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「ねえ、ラーくん……どう思う? この世界」  どうもこうも、と隣で考え込んでいる鵺の顔を見据える。元々魔素が存在しない世界で魔法が使える者がいたり、モノクロームという化け物が存在すること自体がおかしい。世界を構成する何かが狂ったとしか思えない。 「怪しいのはあの相模という男だ。この世界にいながら異世界のことを知りすぎているし、あれだけの魔法を行使している」 「やっぱりおかしいよね……私たちが来る前からその存在を知ってて、一人でモノクロームと戦ってて」  おかしい、そうだ。相模一人だけというのがおかしい。突如この世界に現れた脅威であるならこの世界の人間に認知させるべきだ。それをしないのは、元々一人で戦ってきたか、知られてはいけないと思っているからか。  それともこの世界の人間では太刀打ちできないと知っているから、か? いずれもこの世界の人間の視点ではない。  カズトたちの記憶を消そうとしたのも、あれだけの力を持っているのも――モノクロームと同じ世界から来た者だから、と考えられないだろうか。だからこそモノクロームと対等に渡り合えるし、この世界の人間にも罪悪感を感じている、という風には。
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