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「ほら、ジョージ、もう一回挨拶(あいさつ)をしてきなよ」  タツオは引き締まった肩を押した。混血の天才児は微笑を浮かべたまま青い畳のうえに進みでて、大講堂の四方に頭を下げた。指笛と手拍子が鳴り止まない。  タツオは拍手を送りながら考えていた。ジョージにはカザンの「呑龍(どんりゅう)」に応じた秘策があるという。この少年なら東園寺(とうえんじ)家2000年の秘伝さえ破れるかもしれない。そのときには自分とジョージがあの畳のうえで、決勝戦を闘うことになるのだ。  果たして自分の力で菱川浄児に勝つことができるのだろうか。たとえ「止水(しすい)」をつかっても、勝敗の行方はわからなかった。そこではっと気づく。 「呑龍」対策を慎重に練っていたジョージが、以前から複数回見ている逆島(さかしま)家の秘伝「止水」を打ち破る方法を考えていないはずがないのだ。
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