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「一回戦第3試合を始めます。菱川(ひしかわ)浄児(じょうじ)対岩村(いわむら)領蔵(りょうぞう)、試合場へ」
試合場の向こうで岩村が一礼し、青畳を踏んだ。全国大会常連の養成高校ラグビー部のナンバーエイトだった。身長は190センチ近くあり、体重110キロほどの巨漢だ。
「ああいうのだけとはやりたくないよな」
クニがつぶやく。予選では岩村はシンプルな闘いに徹していた。しつこく仕かけるタックルで相手をつかまえ、倒したら上に乗る。そのまま時間まで相手を固めてしまえば判定勝ちだ。トーナメントでは打撃系だけが強い訳ではなかった。圧倒的な体格差を生かせば、格闘技経験がなくとも勝てるのだ。
ジョージがさっと礼をすると、茶色い長髪が風を受けたようになびいた。大講堂の女性ファンから黄色い歓声があがる。
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