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タツオは上半身ではなく、ジョージのステップワークだけに注目していた。タックルを避け続けている間、身体の重心は両足の中央やや引き気味のところに正確に置かれていた。岩村もフェイントをいれたり、低空で足をつかみにいったりと工夫はしているのだが、まったく効果がなかった。正確な予測とスピードで一桁(ひとけた)精度が違うのでは、幻(まぼろし)を相手にしてようなものだ。ジョージをつかまえるのは、水を抱き締めるようなものだ。
前後に軽く足を開いたジョージの重心が前掛かりになった。低く沈みこむ。ひざにバネが溜(た)められた。
「くるぞ」
岩村のタックルを左に避けたところだった。ジョージの左手が稲妻(いなずま)の速さで走った。
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