Chill out

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添い寝屋、しばらく休業いたします。 そんなメールを送らせていただいた。 しょぼーんとピンクな部屋で一人、膝を抱えて丸くなる。 予約しようと待ち構えていたらしき子たちから、次々と返信がくる。 どうしたの?とか、心配してくれるメール。 みんな優しい。 早く再開してねというメールは、ちょっと心苦しい。 添い寝屋やめるの?というメールに溜め息。 返信するつもりもなく、ただ眺めていた。 部屋は暗くなっていく。 携帯の明かりだけで過ごしていると、隣の部屋に住人が帰ってきた気配。 知らなかったけど、メイちゃんもバイトをしているらしい。 そりゃ一人暮らしだし、バイトをしないと暮らしていけないだろう。 18時までにメイちゃんも返信をくれていて、また今度にしますと予約を諦めたものをくれていた。 俺も添い寝屋じゃないバイトをしよう。 荻田先輩のバイトもやめておく。 腹減った。 そろそろ動き出さないと。 思うのに、溜め息のような息をついてばかりで動けない。 薬ほしい。 「メイちゃん、お腹すいたー」 聞こえないかもしれないけど、隣の部屋に向かって、そんな甘えた声をあげてみた。 メイちゃんの手料理が食いたい。 そうすれば少しは元気が出てくる…はず。 お腹すいた、お腹すいたとひたすら声をあげてみた。 ばたばたと手足を動かして、子供みたいに。 なにもしていないよりは動く気力も出てきた。 腹が本当にきゅーっと鳴ってくれて、のそのそと冷蔵庫の前に移動して、冷蔵庫を開けてみる。 この部屋にあまりいないのに冷蔵庫に何かが入っているわけでもない。 なにもないなぁと冷蔵庫の中を眺める。 当たり前のように部屋に食料はない。 菜園から野菜を盗んでこようか。 きゅうりやトマトがあるはず。 …金がないわけでもないけど。 食べにいくのも買いにいくのもしんどい。 コンコンッと部屋の扉を叩く音が聞こえた。 メイちゃん以外にここの扉を夜に叩く人がいるはずもない。 その音だけでちょっと元気になった。 「ごはんっ」 さかさかと四つん這いで玄関に歩いて扉を開けるとメイちゃん。 その手にはお裾分けのような飯。 腹がきゅるきゅる。 メイちゃんの笑顔に胸がきゅんきゅん。 尻尾があったら振り回している。
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