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近くにいたから。
その程度でもいい。
俺がつきあいたいと思って告白するのなら、相手の気持ちが薄くても喜べる。
告白することに意気込むと恥ずかしくもなって、バイト中、メイちゃんのほうを見れなかった。
ちらちらとは見ている。
メイちゃんはホールスタッフ。
俺はどちらかといえば裏方。
洗い物もするし、料理の盛り付けも手伝う。
人手が足りなかったら料理を運ぶくらいのホールのほうもする。
メイちゃんよりこき使われているような気がしている。
そろそろかなとバイトのあがり時間を気にしていると、店長に声をかけられた。
「柏森、1時間延長できるか?」
できないと答えたいところだけど、まわりが忙しなく働いているところから、残るメンバーだけでは片付けきるのに時間がかかるといったところ。
渋々、それを了承してしまうと、メイちゃんがあがってしまう、お疲れ様でしたの声。
現実は俺に優しくない。
くっそーっと働きまくって、これだけやりゃいいだろとできる限りのことはしてバイトをあがる。
着替えたら、即、メイちゃんに電話をかける。
メイちゃんは電話に出てくれた。
「メイちゃん、飯食べた?」
まずはデートの誘いから。
『お疲れ様です。今作っているところです』
メイちゃんの手料理…。
腹がきゅるきゅる鳴る。
「俺も食べたい。メイちゃんのごはん」
『一人ぶんしかないです…。先に言ってくれたら作ったのに…』
申し訳なさそうにメイちゃんが言ってくれる。
作ってくれる気持ちはあるらしい。
それだけで元気が出た。
先輩とつきあえばいいなんて言われたけど、友達は続行している。
メイちゃんが俺の癒しになってくれるのも続行している。
まだいける。
「明日、作ってくれる?材料費出すから。学校終わったら、一緒に買い物いこ?メイちゃんのごはん、おいしくて好き」
『メイくん、甘えるの上手ですね』
その言葉には苦笑いだけど。
『なに食べたいですか?』
聞いてくれて、俺のバイト疲れも吹っ飛んで笑顔になる。
とりあえず今は友達。
諦めてやらない。
少しでも近くにいる。
メイちゃんの目にとまるように。
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