第1章

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男との出会いは5年前。 主人と出会ったのは4年前。 当然、並行して付き合っていたということになる。当時男のほうに惹かれていたのは事実で。だけど自分が尽くす側の結婚には興味がなかった。結婚するなら大事にされたいという願望が強かったのだ。 そんな私に、主人はピッタリな相手だった。何度もプロポーズしてくれたし、優しくて私に夢中になっている。結婚を承諾したのは8回目のプロポーズの時だった。 何度も連れてきてくれた夜景が素晴らしいレストランで、顔を真っ赤にしながら、 「君をずっと大事にするよ!絶対に裏切ることはしないし、君を傷付けることもしない。約束する。嫌になったら離婚しても構わない。だから結婚してくれないか?」 あまりにも懇願に近いプロポーズに、笑いながら承諾してしまった。そしてその帰り道、私は携帯を取り出し、あの男へと電話を掛ける―。 「今日これから会えないかな?」 『…突然だな。君から呼び出されるなんて珍しい。』 「どうしても伝えたいことがあって。」 『いま少し立て込んでる。迎えに行けないから、タクシーでマンションにおいで。22時には俺も着くと思うから。』 「…わかったわ。」 驚くほど短い電話だったように思う。あの男との会話なんていつもこんなものだけれど。私は駅のロータリーに出てタクシーを拾う。 「○△町の○△タワーマンションまで。」 何度も口にした行き先。これからは二度と使うことはないと、この時は思っていた。
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