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「ウォームに怒られるかもしれないけど……」
(俺の魔力を一度魔石に通すことで、鳳炎に合ったエネルギーを供給することが出来れば……)
「もう一度、俺を守ってほしいんだ。鳳炎」
我ながら他力本願な望みだと思う。
けれど俺の肩にしがみ付いてた鳳炎は、瞳を輝かせて肯定する。
(お任せ下さい。私は、貴方の守護竜です。
見捨てたりは致しませんよ)
「……ありがとう……」
正直、記憶が無いだけ何を言われるの不安だったけど……。
本棟の最上階に辿り着くと、魔石の真下。
ヘリポートである目印のちょうど中央に到達すると、俺の肩から離れる鳳炎は、俺が利用した非常階段から少し離れた所に姿を現した化け物。ダフィラスと対峙するため、俺の少し前を器用にホバリングして見せる。
――チャンスは一度だけ……。
ナメクジのように外壁を這ってきた怪物は、少し戸惑うような動きを見せながらも本棟の中央。まさにヘリポートの中心に佇んだ俺を六本の突起で確認すると、真っ直ぐ向かって来た。
恐らくウォームが駆けつければ、
ウォームの力で排除されることだろう。
その前に俺の魔力で鳳炎を全快させ、
化け物を排除する事が出来れば……。
(やるぞ、鳳炎)
男らしく……
いや、もう男なんだけど……。
改めて気合を入れてイメージを膨らませる。
俺の魔力がどれだけのものか解りきってないけど、魔石以上であるのは間違いないはずだ。
後は、如何に俺のイメージを呪文に乗せるかによって出来栄えが変わってくる。それも魔石の前で湧いた知識と記憶が確かなモノであったらの話だったりするんだけど……。
「地底の恵みを授かりし、
無垢なる熱き力よ。
我が声に応え、我が力を転換し、
我が守護竜の力と成れ!」
単純明快、されどイメージはしかと神に届いたようだ。呪文詠唱を終えたと同時に帰って来たビジョンは、七階で見た魔石が呼吸するが如く大きな気泡を上げた瞬間である。
魔力提供となる俺を起点に、ヘリポートには巨大な白文字で描かれた魔法陣が出現。
しかし、その魔法陣が赤く染まって眩い光を放つと、傍に居た鳳炎に暴風の如く力を注ぎ込む。
その圧倒的なスケールに化け物が威嚇の声を上げるが、全く恐ろしいとは思わなかった。
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