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一体どういう状況に陥っているんだろうか?
その理由を鳳炎から聞き出そうと再度テレパシーを活用するが、タイミング悪く人の気配を感じ取った鳳炎が背筋を伸ばして警戒態勢に入る。
(誰か来るようですね。足音からして、ウォームさんだと思いますが……)
(うぉーむ?)
(御主人の過去を知る人物です。助けていただけたのも、御主人に恩があっての事なんですよ)
そうは言われても、記憶に無い以上信用なんて出来るはずもなく。神経を研ぎ澄ましていると、数回ノックしてから礼儀正しく誰かが入室してきた。
「あっ、起きてたんだね。明かりを付けようか」
声からして、若い男性だろう。
入室して間もなく壁際に設置されたスイッチを押すと、薄暗かった部屋が一気に光で満たされた。
暗がりに慣れてしまった目には明るすぎて、咄嗟に右手で瞳を覆ったものの、周囲が鮮明に見えるようになった分だけ不思議と安堵が生まれる。
「ちょっと眩しすぎたかな?」
椅子の背もたれに控えていた鳳炎は、数回瞬きを繰り返して首を曲げると、目を拭くように身体を擦り合わせてから邪魔にならぬようベッドの上へと移動する。
すると空いた椅子の背もたれを掴んだ男は、座り易いように一度椅子を引きながら言う。
「まさかこんな所で再会するとは、夢にも思わなかったよ。フレム」
――フレム?
先程鳳炎に教えてもらた本名とは、全く異なる名前に思考が止まりそうになる。
第一恩を売ったそうだが、入室してきた若い朱色のもみ長男に……失礼。長いもみあげが特徴的な朱色の短髪ヘア男に会った記憶は無い。
どう話を切り出せば都合が良いのかも分からず、脳内パニックを誤魔化すように無言を貫きながら鳳炎をちら見。
それに気付いた鳳炎は、ウォームにテレパシーを送る。
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