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身を隠していた掛け布団から抜け出し、ベッドから床へと降り立って背伸びした。
――何となく背が伸びた気がする。
なれぬデザインの衣服に戸惑いはあるものの、着心地が悪い訳ではない。緩んでいた鉢巻を整えると、身近な窓辺から稲光がやまない外を見下ろした。
「なんかの基地か」
防壁に囲まれた敷地内には、要塞を兼ねているような設備が見受けられる。
それに愛用の眼鏡を身に付けていなくても、目を細めただけでライフルを持った遠くの人影を確認出来た。
(ここで、この星の研究を兼ねてエベルギー供給を行っているそうです)
(どうやって?)
(分かりません。ただ育ててる魔石から恩恵を受けているそうですよ)
だけど防壁の外側に広がる雷雲の下は、黒く変色した森が広がるだけで豊かな資源があるとは思えなかった。
(なんか、ありそうだな)
記憶が無くても、言葉に出来ぬ緊張感。
それは、ウォームが出払っても変わる事はなかった。
【失った記憶の代償/完】
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