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どこの世界に言っても、それなりの知識というものが必要なのは変わりないらしい。
期待していた分、現実と理想のギャップに凹んでしまう。
――てか、読者受けの展開じゃないリアリティ感いらない。
鳳炎の話が本当であれば、過去の自分は相当凄かったんだろうけどさ。
言葉には出さないにしても、真向いに座ったウォームのガッカリ感が伝わってくる。
「それなら最低限の魔法を教えてから、魔族であるスフォームに会うべきだと思うな」
(ですよね)
「鳳炎が難しいようなら、僕が相手になるし……。剣術は、打って付けの人がいるから紹介するよ」
(助かります。御主人、いかがなさいますか?)
「へ?」
まるで他人事のように会話を聞いていた俺だが、一応話は見えてるつもりだ。
要は、何をするにも本人のやる気の問題なんだろう。
「そりゃあ構わないけど……」
(ホントに使えたりするの?)
記憶が無いから疑っているのではなくて……。今まで過ごしてきた日常からして、実際使えるとは信じられない俺は、疑いの気持ちをテレパシーに乗せて鳳炎に問うた。
すると昔の事をよく知っている鳳炎は、胸を張って言葉を返してくる。
(魔力はしっかり備わっておられますから、大丈夫ですよ)
――いや、魔力って言われても……。
そんな目にも見えないモノをどう信じろと言うんだろうか?
アニメや漫画だったら、身体から何かしらのオーラが出てたりするんだろうけどさ。
残念ながら、今の俺に魔力を感じる事は出来なかった。
「あの……。もし、何か不安な事があれば言ってくれないかな?」
どうやらウォームは、俺のテレパシーを受信出来ていないようだ。俺と鳳炎を交互に目配せをして気を遣ってくれるが、どっからどう説明していいのか分からず……。戸惑いの色を浮かべて鳳炎にアイコンタクトを送ると、気持ちを察した鳳炎が早速代弁してくれる。
(ウォームさん。御主人は、自分に自信がないだけですよ。今まで魔法とは縁が無い世界で暮らしていましたから……)
「そうなんだ。じゃあ、こんな簡単な魔法でも喜んでくれるかな?」
具体的にどんな世界なのか伝えなくても、魔法に縁が無い世界と聞いてウォームが俺に見せてくれたのは、手の平に揺れる赤い炎だった。
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