第1話/夢の中での始まりと帰路

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第1話/夢の中での始まりと帰路

 ――此処、どこだろう?――  真っ白い霧に包まれた空間。  地面に足がついているが、ふわふわと現実味を感じない。夢でも見ているんだろうと思い、周囲を軽く見渡してみると足元から少しずつ霧が晴れて来た。  ――……道路?  それも真新しさを感じさせるアスファルトの上に、自分一人だけが立っている。    ――邪魔になんないかな?  更に時間が経って、薄れていく霧の中で自分が広い交差点の中心。それも幾つもの横断歩道が重なりなっているに関わらず、外れた処にポツンと立っている事に気が付いた。  すると、突然時が動き出したように見知らぬ人々が行き交い始め。これが夢だと自覚した自分は、押し寄せる人波から逃げるように踵を返して走り出した時だった。  ――逃げちゃダメだのに……。    詳細は理解していなくても、心に浸透してくる罪悪感。一体何から逃げているのか分かっていないが、息を切らしながら走っていた自分を一人の男が引き留める。 「お待ちください!」  全力で走っているはずなのに、意図も簡単に腕を掴まれ。勢いよく振り返った先で目にしたのは、癖のある長い赤髪の男。自分と比べて頭一つ分程背が高く、深緑の眼に不似合いな黒いロングコートを纏っていたが、不思議と怖いとは思わなかった。 「齋 英里(いつき えいり)さん、ですよね?」  面識はないはずなのに、間違いなく自分の名を口にする男。  そんな男に一瞬釘付けになってしまうが、今更ながら自分の衣服が普段とは違う事に気が付いて恥ずかしくなってしまう。  ――なんだ、このコスプレのような赤い衣装は!?  首周りの肌が弱い事から、好んで着る事がない赤生地に一筋の太い白ラインが入ったハイネック・ジャケット。  それも丈が短いため、逆に丈の長い淡い黄色の中着が腰布の如くはみ出している。おまけに朱色の長い鉢巻を額に巻いており、青いGパン以外は、独特なデザインとしか思えなかった。  ――てか、どう考えても恥ずかしだろ!?  けれど男は、逃がさないとばかりに両手を握りしめて言う。 「私と一緒に来てください! お願いします!!」 「は?」  誤解が無いように言うが、これは求婚シーンでは無い。  何故なら現実と違って、自分がからだ。
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