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――なんだ、この夢……。
誰かに好かれたいと思った事はあるが、明らかに理想とは異なる展開。それでも悪い気がしなかったのは、心境が女である証拠か?
相手が美形であることもあって、相手の話に耳を傾けた。
ところが、その話を阻止するが如く、瞬く間に数発の銃撃に襲われた俺達は、身の危険を感じて咄嗟に逃走を図る。
「こっちです!
早く上を目指さないと……」
「上?」
男は、何故攻撃を受けたのか解っているようだった。
離れぬよう男が手を引っ張って逃げた先には、夏に指定される水色の襟が印象的な見慣れた白いセーラー服の高校生が、急かすように十字路の右折先で手招きをしている。
――ってか、私?!
自分自身は、コスプレ同然の姿で居ると言うのに……。目の前に現れたのは、黒髪ショートヘアの眼鏡っ子。特別可愛い訳でもない自分自身に、思わず苦笑を零してしまった。
けれど女の自分は、焦った様子で男に言う。
「相手本気だよ」
「でしょうね」
「あそこから飛べるはずだから、雄と行って」
そう言って女の自分が指で差したのは、
突如姿を現した建設現場。
見上げる程に高く築かれた鉄骨の足場の上は、雲のように霧がかかっている。
「アレに昇るの?」
男になっても体力に自信がない自分は、不安気に言った。
そもそも上に何があるというのだろうか?
追われている理由すら分からないまま、男に腕を掴まれている状態で視線を戻すと、女の自分がさらっと提案する。
「担いでもらったら?」
すると男は、担がれる本人の意見を聞くこと無く。無言で(名案だ)とばかりに掴んでいた腕を引き寄せると、問答無用で荷物ように左肩に担いで言う。
「先に行ってますね」
この間、担がれてしまった自分は、男の足元しか見えない。
――まっ、いいけどさ。
これからの展開が読めず、半ば諦めモードに入っていると、追っ手を振り切るために男が逃走路として選んだのは、民家の塀を足場に上がって見せた屋根の上。
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