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第2話/失った記憶の代償
――何が一体どうなんってるんだろう?
ファンタジー展開は、
個人的に小説を書く程好きだけど……。
真っ暗ではないにしても薄暗い室内に、時折瞬く稲妻の光。天井を見上げると、明かりの照度が加減されていた。
――夢の続きにしては可笑しいよな。
次第に目が慣れ、自分が必要最低限の家具しかないシンプルな内装の部屋に居る事が分かった。
言っとくが、自分が住み慣れいる空間ではない。それどころか、生活感が無さすぎてモデル・ルームに居るような気分だ。
――明かりでも付けようか。
いつもなら起床して暫くは電気を点けようとは思わない。その日が予定の無い休みなら尚更の事だ。
でも不安からベッドから動き出すと、ゆらりと蠢く光に気付いて身体が硬直する。
シルエットからして大型の鳥のようだが、やたら首が長い。近付く勇気がなかったので暫く凝視を続けていると、稲光がフラッシュの役割を果たして、とんでもないモノを目の当たりにした。
「ど」
――ドラゴン!?
驚かせないよう心の中で叫ぶと、咄嗟に手の汗を握った。動物園で飼育されているワニですら、分厚いガラスの向こう側でしか見たことが無いのに……。
椅子の背もたれに掴まって器用にバランスを取る朱色のドラゴンは、檻どころか拘束すらされていない。まさに放し飼いの状態で、目が合った相手をガン見すると、首を傾げた仕草を見せた後に二対の翼を広げた。
その雄姿から威嚇でもされているのかと思ったが、再び稲光がフラッシュの役割を果たし、それが夢の中で見た赤いドラゴンと白い鳥の翼であることに気付く。
「鳳炎?」
でも夢の中で見た鳳炎は、立派な人型だったのに……。
勝手に擬人化していたんだろうか?
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