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今目の前にいる相手は、鳩程のサイズはある爬虫類型。しかもチラチラと見える白い歯型からして肉食だろう。
鳳炎だと思い込みで手を差し延ばせば、噛まれるどころか。食われる可能性がある。
――どうしようか。
とりあえず度胸の無い自分は、身を守るために掛け布団を頭から覆った。
けれどドラゴンは、襲い掛かってくるところか。聞き覚えのある声で、相手を気遣うように話しかけてくる。
(あの……。私の声、聞こえますか?)
でも向かい合ったドラゴンが、声に合わせて口を動かしているようには見えなかった。
訝しげにドラゴンの様子を窺っていると、ドラゴンが首を傾げながらも言葉を続ける。
(力を使いすぎて、人型になれないだけなんです。どうか怖がらないで下さい)
「じゃあ、やっぱり鳳炎か?」
(はい。どうやら記憶が英里さんのままのようですね。先程からずっと、テレパシーで呼びかけていたんですよ)
だけど英里の世界には、テレパシーなんて実在していないため実感が湧かない。
注意深く相手の口元を窺っていると、鳳炎が気を利かせて提案する。
(試しに私を心の中で呼んでみてはいかがですか?思ってるだけではテレパシーは成り立ちませんよ)
「そうなんだ」
(テレパシーは、あくまで相手に話を聞いてほしい意志から生まれるものです。後は、相性というか。相手が気に囚われている物事や感情によってくると思いますよ。実際私が鳳炎と分かるまで、怖いと思っていたのではありませんか?)
確かに、目の前にいるドラゴンが鳳炎と気付くまでは恐怖の対象として相手を認識していた。
だから鳳炎がいくら呼びかけても、恐怖から相手の気持ちを拒絶していたんだろう。
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