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『ゆう…た…』
暗闇の中、見知らぬ女の人の声がする。
――誰…この女の人…、なんで血だらけなの…?
女の人は手を近づけてきてそっと頬に手を添える。
『ゆうた……人を……しんじては……ダメ』
――え……?
『あなたのそばに……いる。気をつけて……』
――何を言ってるんだ……? この人は……誰?
『あなたは……生きて……』
――誰なの?
「優太―――!」
「!」
自分の前で血を流しながら呼んでくる女の人とは違う声が耳に響いたかと思うと目の前の暗闇は消え、太陽の光が目に差し込んできた。
――ここは……、僕は寝ていたのか……。
当たりを見ると自分は芝生の上で寝っ転がっていることが分かり、目の前には自分のよく知る女性が立っていた。
――大学の中庭……。
「なにボーっとしてるの。ここは外よ。何でこんなところでお昼寝なんてしているのかしら」
女性は少し顔をひきつっていて何やら怒っているようだ。
「華菜……さん、どうかしたんですか?」
恐る恐る聞くと華菜と呼ばれた女性はその場にしゃがんで寝ている腕を引っ張って体を起こさせた。そして優太の両肩をつかんで真っ直ぐ顔を見てきた。
「どうかしたんですか、じゃない。大丈夫? うなされていたけど」
「あ……、はい」
真剣な眼差しで言ってくる彼女の目に一瞬驚いてしまい、あいまいな答え方になってしまう。華菜自信が心の底から心配をしているということが身に染みて感じた一言だことばだったから。「そう……ならよかったわ」
返事を聞くとホッとしたのか少し肩の力が抜けたように落ち着いた。
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