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「優太くーん!」
二人が話しているとそこへ女子大生が一人手を振って駆け寄ってきた。
「奏ちゃん?」
「優太君探したよ! 研究室に行ったらいないんだもん」
ずっと走っていたのか息をきらしている。少し間をあけて呼吸を整えると奏は優太に持っていたファイルを渡した。
「なんですかこれは? なっ」
素直に受け取ってファイルを開けながら言うと開いて直ぐに見えた言葉に思わず固まってしまった。その反応を見て隣から華菜もファイルを覗き込む。
「何々どうしたの……ってあれま~」
『間宮優太さんに講義をしてもらいたい』と大きく書かれていて下には署名が書かれていた。しかも何枚もページをめくっても学生の名前がずらりと書かれていた。
「先輩に頼まれたの。優太君はいつも「僕には皆さんの前で話せるくらい優れた人間ではありません」って言って交わすから署名を集めて講義をしてもらおうって話になって、私に優太君にこのファイルを渡すように頼まれちゃったの」
申し訳なさそうに言う奏をよそに華菜はニヤニヤ笑っている。
「学生達、仕掛けてきたわね。どうする? 天才くん」
「……天才じゃないです」
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