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「何言ってるの。あなたはこの日本一を誇るロボット技術校のメカニック大学全校生徒の中から選ばれた成績最優秀者なのよ?」
国立メカニック大学。日本国内で最も高い技術を誇るロボットの専門校。毎年この大学では全校生徒の中から一人成績最優秀者を理事長自ら選び、選ばれた学生は理事長から研究室を与えられ、特別待遇になる。
「でも優太君は先輩たちに何の講義をしてほしいって言われてたの?」
「……四年前、僕が発表したウイルス型システムについてです」
「ロストウイルスのこと? あれは確か優太がまだ研究してるわよね?」
「理論上で証明しただけなのでずっと研究を進めていたんです。つい最近、実験は成功したんですが」
話ながら優太は自分のケータイタブレットでシステムのプログラムを確認した。
「僕はまだこの話をするのは避けたいんです。もっと応用して色々なことに利用できないか研究したいですし」
「優太。無理にとは言わないけど、もう少し人と触れ合うのを増やした方がいいんじゃないかしら? あなた自身が人を遠ざけるからカウンセリングの進めがくるのよ」
「……」
顔を伺いながら華菜が言うと動かしていた手を止めてタブレットをバッグの中にしまった。
「…わかりました。講義をします」
「よし! えらい」
華菜は満面の笑みを浮かべて優太の背中を叩いて立ち上がる。
「講義の準備をします。華菜さん、講義の申請書を書いてもらっていいですか?」
「わかったわ。書類を取りに行ったら研究室に行くわね」
華菜はこの大学で二十五歳という若さで准教授を務めているため、色々顔が利くから書類等は華菜に頼むようにしている。だからそのことをわかっていて書類を取りに走って行った。
「僕は研究室に行きますが、奏ちゃんは研究室でお茶でもどうですか? いい茶葉が送られてきたんです」
奏の方に顔を向けて笑いながらいうと奏も笑って「行く!」と言って優太の後をついて行った。
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