第1章

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「そろそろ、お開きにしようか。」 坂井さんがそう言ったのは、飲み会が始まって2時間が経った頃だった。時刻は21時を少し過ぎていた。 やはり、パートのおばちゃん達には家庭があるので二次会というものはない。 「また、仕事場でねー!」 酔っぱらって意気揚々に帰っていくおばちゃん達を見送った。 そして、長谷部と二人きりになる。 「じゃあ、そろそろ俺も。。 そう言いかけたときだった。 「何か物足りなくないですか?」 (え?) 「もう一軒行きませんか?」 (いやいや、あんた充分過ぎるほど飲んでただろっ!) 心の中で突っ込まずにはいられなかった。 「あー、俺はもういいかなー、なんて。。」 そう言い終わるのを待たず、長谷部はすごく寂しそうな顔をしてうつむいた。 「行きましょう!行きましょうもう一軒!」 その寂しそうな顔を見るといたたまれなくなり、つい咄嗟に口から出ていた。 俺がもう一軒行こうというのを聞いて、長谷部はすごく嬉しそうに、次どこ行きます?と言ってきた。 店にいるときは気がつかなかったが、恐らく、長谷部は完全に酔っている。 長谷部は酔うと人懐っこくなるらしい。 顔はイケメン、酔うと人懐っこくなる。 なんという、天然人たらし。。 これは、男でも可愛いと思ってしまうだろう。 何てことを考えてる俺も相当酔っていたと思う。
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