第2章

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約束のご飯当日、俺と長谷部はオムライス専門のチェーン店に来ていた。 「すみません、我が儘言っちゃって。」 長谷部が申し訳なさそうに言う。 「いえいえ、こちらこそ車に乗せてもらっちゃってすみません。」 「いやいや、それこそ気にしないでください。じゃあ、中に入りましょうか。」 「はい。」 店内に入り、店員さんに禁煙席に案内してもらった。 「長谷部さんて、タバコ吸わないんですね。」 「昔は、吸ってたんですけど、今はもう止めてます。」 「すごいですね。禁煙て辛いって聞きましたけど。」 「辛いですよ。でも、最初の内だけです。」 と、答えながら長谷部はメニュー表とにらめっこを始める。 俺はその様子を眺めていた。 長谷部のこのメニュー表の見方おもしろいよなあ。 「んー、ケチャップライスにするかバターライスにするか。。」 長谷部が相当悩んでいる。 そもそも、今日オムライスが食べたいと言い出したのは長谷部の方だった。 今日どうしましょうか?と聞くとオムライスが食べたいです!と即答だった。 いやあ、ハンバーグとオムライスで悩んでたんですけど今日はオムライスの気分でした。へへっと笑いながらそう言う長谷部を見て、子供か!と突っ込みたくなった。 「んー、王道のケチャップがかかってるだけのやつなら絶対ケチャップライスなんですけど、このデミグラスソースのやつだとバターライスも捨てがたい。。」 長谷部は更に悩んでいる。 「何と何で悩んでるんですか?」 「ケチャップライスにケチャップをかけたやつか、バターライスにデミグラスソースをかけたやつかで悩んでます。」 「じゃあ、俺が片方頼みますよ。そしたら交換できますしね。」 「いんですか!?ありがとうございます!」 長谷部は本当に嬉しそうだった。 そして、楽しそうに店員さんに注文していた。 「本当にオムライスが好きなんですね。」 「そ、そうなんですよ。なんか子供っぽいですよね。」 「そんなこと。。。ありますね。」 と、ちょっと茶化したように言ってみた。 「参ったなあ。」 と、恥ずかしそうに長谷部は笑った。 長谷部のこのギャップはズルい。 俺は年上の男に対して初めて可愛らしいと思ってしまった。
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