第2章

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「資格の勉強は捗ってますか?」 前から気になっていた。 「今、追い込み中です。来月試験なんで。」 「試験、来月なんですか。」 長谷部はスーパーにいつまでいるんだろう。。 「もし、試験に受かって資格とったら、そこから直ぐに就職活動ですか?」 「そうですね。受からなかったとしても、始めるかもしれません。」 「そうですか。」 「久瀬さんは就職活動しないんですか?」 「やらなければと常に思っているんですが、なかなか腰が上がらなくて。」 学生時代の就職活動の日々を思い出す。 周りの人達が内定を貰っていく中、内定を貰うことができなかった自分。 そして、今はもう新卒ではない。確実に学生時代より厳しい就職活動になるだろう。 「そうですか。恐いですか?」 「え?」 「就職活動始めるの。」 「はい。恐いです。」 話し相手が長谷部でなかったら、恐らく俺は、あれこれと言い訳をして自己弁護をしていただろう。誰かに否定されたり、責められるのが恐くて。 でも、長谷部なら優しく聞いてくれると思った。否定することも肯定することも無く、ただ受け止めてくれるのではないかと。 「今のままでいいんですか?」 長谷部の口調はとても優しい。 「いえ、ダメです。わかってるんですけど。。」 「大丈夫です。久瀬さんなら。」 「え?大丈夫って、何が?」 「もう一度頑張れる力を持ってると思います。」 一見、無責任に感じるその言葉を、長谷部に言われると、そうかもしれないと思ってしまう。長谷部が言うなら俺はまだ出来るのではないかと。 「お待たせいたしました。」 店員がオムライスを運んできた。 その瞬間、長谷部の顔が子供の笑顔の様に輝いた。 本当に、この人は。。 不思議な人だ。
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