第2章

10/15
前へ
/64ページ
次へ
車はまだ走り続けている。 「どこに向かってるか、聞いちゃダメですか?」 先ほど答えてもらえなかったので、少し遠慮気味に聞いた。 「えっと、僕の好きな場所です。」 長谷部はいつもの優しい表情で言う。 長谷部の好きな場所。。 俺なりに考えてみる。。 オシャレなバー。 オシャレなカフェ。 オシャレなインテリア雑貨店。 オシャレな。。。 なんか全部オシャレがつく。。 そう考えると俺と長谷部がこうやって一緒に遊ぶって奇跡の様に感じる。 長谷部は俺といて本当に楽しいと思っているのだろうか? 長谷部は優しいから、気を遣っているのかもしれない。 何て考えていると、長谷部が唐突に口を開く。 「久瀬さんと一緒にいると昔を思い出します。楽しくて、懐かしくて、帰りたいと思うあの頃を。」 「え?」 長谷部にも、戻りたいと思うことがあるらしい。それは当たり前か。。 長谷部だって一人の人間だ。辛いと思うこともあれば、逃げ出したいと思うこともあるだろう。泣きたいときだってあると思う。。 今まで見ていた長谷部があまりに大人で、優しくて、どんな人にも分け隔て無く接していたから、俺はそんなこと考えたこともなかった。 気づいたら俺は長谷部の頭を撫でていた。 ただただ、優しく長谷部の頭を撫でていた。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加