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「あの、何してるんですか?」
長谷部の素朴な疑問。
「長谷部さんを見てると弟を思い出して。」
「久瀬さんに、弟さんいないじゃないですか!」
長谷部が笑いながら言う。
「はい、いません。飲み会のときのお返しです。」
俺も笑いながら答える。
長谷部は参ったなあと言いながら運転を続ける。
「もう少しで着きますよ。」
長谷部がそう言ったとき、車は山道を進んでいた。
どこに行くんだろう?
俺は車を持っていないので、こんなとこまできたことがない。
「着きました。」
長谷部がそう言ったので、辺りを見回してみたが、真っ暗で何も、見えない。
「長谷部さん?」
俺はハテナを頭に浮かべながら長谷部の方を見た。
すると、長谷部は少し話しましょうかと優しく微笑んだ。
「あの、長谷部さんは前の彼女とどれくらいつき合ってたんですか?」
長谷部の提案を受けて、気になっていたことを聞いてみた。
長谷部は、正面を見たまま静かに話し始めた。
「彼女とは高校2年のときに知り合いました。」
「たまたま同じクラスになって、たまたま隣の席になりました。」
「僕は彼女に一目惚れしました。生まれて初めての一目惚れです。」
俺は黙って、長谷部の話しを聞いた。
「高校3年になる直前に彼女に告白しました。もしかすると、違うクラスになってしまうかもしれないと思って。」
「彼女の答えはノーでした。あまり喋ったこともない人とはつき合えないって。
僕、初めての一目惚れで、緊張して、一年間まともに彼女と話したことなかったんです。」
「でも友達からならって彼女は僕に優しく笑いかけてくれました。それで、友達から始めることにしたんです。」
長谷部は昔を懐かしむかの様に、遠くを見つめながら話した。
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