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「久瀬さんて何歳なんですか?」
長谷部が爽やかな笑顔をこちらに向けながら話しかけてきた。
(ついに来たか。。)
長谷部が入ってきて5日ほど経っていた。
「25歳ですよ。」
少し無愛想に答える。
「そうなんですね。転職中とかですか?」
長谷部に悪気が無いのは分かっているが、俺は長谷部に対してイラつかずにはいられなかった。
「いえ、転職ではなく、就職活動中です。俺、まだ就職したこと無いんです。」
「そうだったんですか。就職活動大変ですもんね。」
そう言った後、長谷部はそれ以上何も聞いて来なかった。
お、重い。。空気が。。
俺のせいなのは百も承知だ。なので初めて話しかけることにした。
「長谷部さんは何歳なんですか?」
そう聞くと、長谷部は満面の笑みで、
「27です。あ、今年で28になります。」
と、答えた。
俺より3歳年上ということにも驚いたが、俺が話しかけたことがよほど嬉しかったのか、少年の様な笑みを浮かべたことにとても驚いた。
「僕、今、会社辞めて資格取ってる最中なんですよ。」
長谷部は饒舌に自分のことを語り出した。
「それで今、勉強してるんですけど、なかなか思うように進まなくて。。」
苦笑いしながら長谷部は恥ずかしそうに言う。
「そうですよね。何歳になっても勉強は嫌ですよね。」
俺は、社交辞令の様にそう言って会話を終わらせた。
その会話以降、長谷部とプライベートなことを話すことはほとんど無かった。
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