第1章

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「いらっしゃいませー!」 居酒屋の店員の元気に圧倒されながら席に案内された。すると、そこには自分以外の参加者がもう席に着いていた。 「久瀬君が最後だよー。遅刻遅刻!」 と、野村さんが冗談っぽく言ってくる。 野村さんも主婦のパートの人だ。 「すみません、まさかみんながこんなに早く来てるなんて。」 俺は、集合時間の5分前に着いたのだが、もっと早く来るべきだったらしい。 謝りながら座るところを探すと、長谷部の隣が一つ空いているだけで、他に空いている席はない。 一瞬、フリーズしそうになったが、それを長谷部に知られたくなくて、あたかも最初からわかっていたかの様に長谷部の隣に座った。 (正面じゃないだけマシか。。いや、マシなのか?) 何てことを考えていると、 「飲み物決めよう。」 と、坂井さんが言ってきた。 「生で!」 と、答えると、 「じゃあ、僕も生で。」 と、長谷部が言った。 そういえば、長谷部はどのくらい飲むのだろう。そして、酔うとどうなるのか。 少し気になるかも。。 「じゃあ、今日もお疲れ様!かんぱーい!」 坂井さんの音頭でみんな一斉に乾杯する。飲み会は得意じゃないけどこの瞬間は結構好きだったりする。 隣の長谷部とも乾杯をし、ビールを一口飲む。うん、やっぱり美味い。 「ごくごくっ。。あー美味い!やっぱり働いた後のビールは美味いですね!」 長谷部はグラスの半分以上のビールを、もう飲んでいる。 「おかわりください!」 と、早くも長谷部がグラスを空けた。 「良いねー!長谷部君!じゃんじゃん行こっか!」 と、ノリノリの坂井さん。普段決して暗い訳ではないが、こんなにノリノリな坂井さんを見たのは、初めてだったので、とても驚いた。 「はい!じゃんじゃん行っちゃいます!」 そして、こんな長谷部も初めて見る。 (大丈夫かな。。) 一抹の不安を抱きながら、俺もビールを口に運ぶ。
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