お菓子眼鏡と曲芸師

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彼は、病気だった。 別段生命に関わる、というわけではないが、18歳を迎えると、そこから成長が止まる、というものだった。 …彼は死ぬまで若かった。 天使の俺も驚くほどに。 彼が死ぬまで俺は彼の横にいた。 ずっとずっと横にいた。 彼が死んだ時、最後の祝福をしたのも俺だった。 そうして気づいた、俺は彼が好きだった。 彼を愛していた。 「彼に落とされていた。」 死ぬ間際まで彼は俺に魔法をかけてくれた。 最後にくれたお菓子は、なんだったか、どうしても思い出すことができない。 ふと枕元に置いてある彼を模した人形に目が行く。 それを抱き上げて、忘れないでくださいね、と言われたような気がする。 彼がいなくなってから早200年近く経つ。 午前、3時。
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