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迷路のようなパイプ。ところどころにある亀裂。見知らぬ天井は見慣れた天井に変わっていた。もう三日近くたっただろうか。太陽を拝めない生活がつづき、俺の体内時計はずいぶん乱れてしまっている。石タイルの床に敷き布を広げ、寝転がる日々がこれほどまでにつらいとは。いったいだれが予想できたであろう。
空き家の地下室は少しカビくさい。同時に、表現のしようのない独特のにおいもする。相棒はそれをひどく嫌い、場所の変更を何度も訴えたが、俺は受けつけなかった。逃亡者に選択の余地など存在しない。
太陽代わりのランタンを頼りに、俺は近くにある分厚い専門書をつかむ。パラパラとめくる。難解な文章と専門用語の羅列。頭と目が痛みだす。すぐ投げだした。やはり学問なんて肌にあわない。前の住人はどうやら堅物だったらしく、娯楽系の本はまったく置いてなかった。
「ふう。この先どうしたものか」
ぽつりと吐露する。髪をさわりながら色々と考えてしまう。俺の悪い癖だ。考えたところで結果は最初から出ているのに。
「逃げつづけるしかないよ」
抑揚のない声が、俺のひとり言に答えた。
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