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駆逐艦『雷』艦橋
「工藤艦長、前方の浮遊物は全て英国海軍の水兵のようです」
「…………」
工藤俊作艦長は、暫し黙り込んでいたが、やがてゆっくりと艦長席から腰を上げると、艦橋内の乗組員達へと視線を向け、
「対潜要員は引き続き敵潜水艦に注意。警戒を厳となせ」
そう言うや否や、艦橋を後にしようと鉄扉に手をかけた。
「か、艦長!?どちらへ……」
「甲板上に集まっている者達へ……直接指示を下してくる……」
そう呟いた工藤の瞳は鋭い眼光を放ち、艦橋を後にした。
鬼神の如きオーラを放ちながら、彼は兵士達が集まる甲板へと出る。
「諸君っ!!」
その一言で、兵士達の視線が一斉に工藤のもとへ集まった。
「っ!工藤艦長!」
工藤を前にした兵士達は、咄嗟に姿勢を正して敬礼を送る。
対する工藤も返礼でそれに応え、やがてゆっくりと口を開いた。
「……前方に、敵兵がおよそ400名浮遊していることが確認された。英国海軍の兵士達だ」
低く野太い声は、気迫と共に鋭く兵士達の耳へと通っていく。
「これから諸君に下す命令は……私が……工藤俊作が独断で決定したものである」
その表情は兵士達と同様に険しい。
━━敵兵を皆殺しにせよ。
誰もがそう命令されるものだと、またそうあるべきだと考えながら工藤の言葉の続きを待つ。
「総員、直ちに全力を以て━━」
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