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03月02日 午前10時37分
夜が明けてから暫く経った。
浮遊する残骸に突っ伏し、最早生きているのか死んでいるのかも分からぬ者達しか視界に入らなくなっていた。
相変わらず味方の救助艦は姿を現さない。日本軍に完膚なきまでに打ちのめされたわけだから、当然といえば当然なのかも知れないが、それでもこのまま見捨てられてしまうのではという憶測は、なかなか精神面に堪えた。
そんな時だった。
近くで顔を上げた一人の水兵が、突然震えながらも声を張り上げた。
「ふ……船だ……船が見えるぞっ!!」
その言葉に、次々と瓦礫にもたれ掛かっていた者達がハッと顔を上げた。
俺もその水兵が力なく指差す方向へと視線を動かす。
すると、確かに水兵の言う通り、軍艦がこちらへ近付いてくる様子が目に入ったのだ。
俺の隣にいた若い水兵もその軍艦を目に捉え、凍てつく寒さに震えながらも口元に笑みを浮かべた。
「やった……助けが……助けが来たぞ……!」
「どこの艦だ……アメリカか、オランダか!?」
━━これで助かる。
周囲の水兵達も口々にその喜びを込めた声を発し、神へと感謝の意を捧げる。
……だが。
「……ま、待て……よく……よく見ろっ!!」
共に耐え抜いてきたジークが不意にその笑みを消し去り、みるみる青ざめたかと思うと、悲鳴にも似た声を周囲に発した。
「友軍じゃない……日本海軍だ……!」
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