その軍艦は死神か

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「ったく……若いもんはコロコロと熱のやり場を変えやがる……前原っ!!これ使えっ!!」 それを見た高野は笑みを浮かべ、側にあった浮き輪を海面へと放り投げた。 それを発端に、次々と乗組員達は自ら海へと飛び込み、自力で上がれない英国兵達を抱き抱えて沈まないようにロープや浮き輪でその体を固定して引き揚げ始めた。 更にそれを見た工藤艦長は、艦橋を通して大胆な指示を飛ばす。 「一番砲担当員と雷撃班のみを残し、残りの戦闘要員達は全て救助作業へ回せ!」 この命令で救助作業中は必要最低限の人員を残し、乗組員達はほぼ全てが救助作業に没頭した。 漂流者の影が例え一人でも、見つければその場へ走って機関を停止し、救助。再び発進。燃料の消費速度が速まることを承知しながらも、工藤艦長は一人も見逃すことはせず、可能な限り救助作業を続けた。 数時間後には、甲板上は救助された英国兵士で一杯になった。 乗組員達は艦内に備蓄していた衣服、食料や飲料水等を分け与え、 「Thank You……Thank You……」 という英国兵士の消え入る様な、しかし確かに彼らの心から発せられた声に笑顔で頷きながら怪我人の看病に勤しむ。 そこへ再び工藤艦長が姿を現した。
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