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……ああ、そんな……
こんな事に……なるなんて……
爆発の衝撃に捲き込まれ、四肢が弾けとんだ者。
銃弾の如く吹き飛んできた鉄材に押し潰された者。
どれも皆、今日まで共に闘ってきた戦友達だ。
見渡す限り広がる惨状に、私は経験したこともない苦しみに襲われた。
全身が焼けるように熱く、裂けるような痛みが引いてくれる気配はない。
それでも私は、何処かに生存者はいないかと懸命に辺りを見回した。
「グッ……ゴホッ……!」
と、その時。
炎上する通路の傍らで、人の噎(む)せる声が。
その姿に、私は言葉が出なかった。
右膝から下の組織は消し飛び、口元からはおびただしい量の血が溢れ、そして……
太い鉄材が、深々と腹部に突き刺さっている。
彼は、連合軍に対する憎悪を人一倍燃やしていた、前原だった。
余りに酷い容態だ……きっと彼も、もう助からない。
積み上げてきた宝が全て打ち砕かれ、絶望に叩き落とされたような感覚に陥った私は、彼を見つめたまま呆然とすることしかできないでいた。
……しかし彼は。
「……ああ、……お前か……」
朦朧としているはずなのにも関わらず、あろうことか私へと目を向け、声を発した。
驚きの余り、どうすればよいのかもわからない。
……あり得ないのだ……
「俺の最期を……見届けてくれるんだな……」
━━彼が私を認識できるはずはないのに……
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