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━━同時刻.
同艦『エンカウンター』後方甲板
「くそっ……もうダメだ……」
ここで死ぬんだと、第六感が呟いた。
日本海軍の追撃は凄まじい。
これまでは単なる極東の島国が持つ海軍など、世界に覇を唱えた我が英国海軍の敵ではないと信じて疑っていなかったが、たった今、その絶対的な自信は奴等の手によって粉々に砕かれてしまった。
代わりに生まれたのは、ただ純粋な『恐怖』のみだ。
奴等が先日、我が英国海軍の最新鋭にして最強と謳われた戦艦『プリンス・オブ・ウェールズ』を沈めたというのも納得がいくほどの強さである。
連中は無能な野蛮人などではない。『サムライ』の恐ろしさはただの噂ではなかったんだ。
「機関室がやられた!逃げ切れない!」
混沌に支配された甲板に、そんな誰かの怒声が響き渡る。どうやらこの艦艇もここまでらしい。
もう幾発もの直撃弾を受けたせいで鋼鉄の船体は食い破られ、周囲に横たわる何十人もの怪我人の呻き声だけが聴覚を刺激し続けてくる。
今や『エンカウンター』は、地獄へと沈むのを待つ『ただの鉄の塊』と化してしまった。
「フォールっ!無事かっ!?」
そんな中で、背後から俺を呼ぶ声が聞こえた。
「っ!ジーク!」
共にこの艦艇で戦ってきた仲間、ジークだ。よく見ると右脚を引き摺ってこちらへ向かってくる。軽いとは言えない怪我を負ってしまったらしい。
「お前……脚をやられたのか……!?」
「大丈夫だ……!それよりここを離れるぞ。モーガン艦長より退艦命令が下りた」
退艦命令……即ち、艦艇の撃沈に捲き込まれぬように海へ飛び込めということである。
痛恨の極みではあったが、最早軍配は日本海軍に挙がっている。
「フォール、早くしろ!」
沸き立つ怒りと悔しさを必死に圧し殺し、俺は『エンカウンター』を離れ海に飛び込んだ。
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