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二人が姫に気を取られている間に、雷光で散り散りになっていた悪霊が一つに纏まると人の形になり術式の周りを彷徨い出した。
「平安京に災いあれ…京に災いを…」
悪霊が唸りながら呟くのを聞き翡翠は左手で典保を庇いながら式符を数枚ばら撒いた。
「悪霊退散…急急如律令」
式符から雷獣が現れ悪霊に襲い掛かる。
その隙に翡翠は地面に書かれた術式を阻止する為に禹歩(うほ)の体勢に入り手で印を結ぶ。
「臨兵闘者皆陣列在前」
四縦五横に切る所作をし足で地面を踏み鳴らしながら印を描く。
唱え終わる直前で悪霊が、翡翠目掛けて襲いかかろうとした。
「危ない」
その瞬間、典保が翡翠の前に立ち悪霊から庇い立ちはだかった。
その声に応えるかの様に姫の身体が光り桜吹雪と身を変えると二人を悪霊から守る。
完成した翡翠の術が発動すると、地面の術式が消え辺りは静まり視界も明るく感じられた。
「あ…姫が…翡翠殿…今のは…」
典保は驚き翡翠に訊ねる。
「姫の最後の力で、我々を守ったのです」
翡翠は、その場に残された合わせ貝を地面から拾い上げ手に取ると中を見る。
中には淡紅色の花弁が数枚入っていた。
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