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「自らの力を花弁に封じていた様です」
手の中で花弁が緩やかに消えていくのを見ながら翡翠が話す。
「翡翠殿。推測ですが、この事件の黒幕は姫では無いと思います」
「はい…姫は贄で黒幕は別に居るかと…」
翡翠の返事に、典保は桜の木を見上げた。
「翡翠殿。ほら、桜が綺麗ですよ」
「典保殿、何を…っ」
術の中心となった桜は本来の色を取り戻し淡紅色に戻っていた。
はらはらと花弁が散る中、翡翠は亜子姫が贄にされようとも人々を守ろうとした、その思いを桜から感じた。
「黒幕退治をしなくては。今度も一緒に…あっ、その時は式では無く電話を使って」
典保は電話を持ちにっこり微笑んだ。
「善処…します」
典保の身分が上で反論出来ない翡翠は頬を引き攣らせながら頭を下げた。
「検非違使として、第二第三の贄を出すわけにはいきません」
「お坊ちゃまと思っていたが…骨があるな」
翡翠はそう呟くと、桜の木をまた見た。
力説する典保の傍で翡翠は桜の木に誓った。
「亜子姫、必ず仇は…贄にされても人々を守ろうとした想いは、この翡翠が…」
それに答えるかのように、優しく桜の花弁が二人に舞い落ちた。
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