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「姫の一族は平城京治安の陰陽師だが…住むのは容易では無いだろう。彼の地は更に荒廃が進み、もう殆ど人は住んでいないと聞く」
平安京に霊障が少ないのは、平城京を中心に霊障が集まっている為でもあった。
荒れた地には妖が出現しやすい、それ故に平城京は妖が集まる場所となっている。
翡翠は先程の報告の為に式を飛ばそうとして電話の事を思い出して、渋々電源を入れると新たな被害者の報告をした。
その後、直ぐに平城京へ向かおうとした翡翠に上司が待ったをかけた。
検非違使の相棒を連れて行く事に成り、式に乗せ空を飛ぶ事になった。
初めての経験に藤原典保は上機嫌で式から身を乗り出し景色を眺める。
「式とは便利ですね。ほら、西の高層建築物が良く見える」
人懐こい典保は不機嫌な翡翠など構わずに遠くを指差し話し掛ける。
典保は平城京に降り立ってからも辺りを見渡すと、翡翠に話し続けた。
「資料では知っていましたが…この荒廃ぶりは…あっ、それが式の一種の人型ですか」
大貴族の子息で現場に出た事が無い典保と相棒になった翡翠は、陰陽師仲間から貧乏くじを引いたと言われていた。
「確かに貧乏くじだ。くそっ」
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