《第10章・想いの向こう側…②》

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『松本さんなんか…松本さんなんか…』 『《松本さんなんか》…何?』 『………』 『これも質問よね(笑)、美和答えてない』 松本はまたブラウスのボタンを外す、もはや何もしていなくてもブラウスやストラップは美和の肘・背中でくしゃくしゃになる。 『松本さんなんか、松本さんなんか大っ嫌い…』 美和は涙目で松本を見上げ必死に泣くのを我慢していた。 『美和…美和ちゃん、松本拓也が本当に嫌い?』 ニヤニヤと意地悪気な顔は【大嫌い】の言葉により、哀しそうなせつない打ちのめされた表情になり手にしていた携帯をテーブルに置いた。 『もう…もうしない…ごめん』 テーブルの方に向いたままうつむいた松本は、美和よりも大きいのにどこか華奢に見えた。 『本当に嫌いならもうしない』 美和は【大嫌い】って言葉に意気消沈する意外な松本に戸惑っていた。 『美和が嫌ならさっきの画像だって削除したって良い…だけど松本拓也自身としては《会いたい時に眺めていたい…》だから…どうして良いかわからない』 松本さんには今までたくさん助けてもらった… 私の恋する気持ちをフワフワさせキュンキュンする事も多かった… 【おいで!受け止めてあげるから】 あの時の松本さんを思い出すと【大嫌い発言】は嘘になるの… 美和は恥ずかしさもあったが今引き留めないといけない感情が勝り、松本の背中に両手をまわした。 松本の背中はビクンッと反応し、溜めていた息をゆっくりとはいた。 『美和…どういうつもり?大嫌い…じゃなかったの?』 松本はまわされた美和の両腕から手のひらまでゆっくりと見た。《背中に感じる美和》を意識し美和の両手に両手を重ね優しく撫でる。 『松本拓也を嫌いなんじゃないの?』 行かないで… 側にいて… 美和は心の中で松本さんに呼びかけているのに、恥ずかしさと恋愛経験のなさからためらっていた。 『私…』 まわした両手を握っても緊張がとれない美和、深呼吸する美和。 『言いたい事が言えるまでこうしていようか…』 5分はたっぷり経った頃、美和がためらい気味に小さく言った。 『大嫌いなんて…嘘…』 【大嫌いなんて嘘】 中学生の恋のように嬉しそうに顔をほころばす松本。 松本の感情すら一喜一憂させてしまう、小さくても手におえない美和… かわいい美和… そんな感情が松本の心を占める。 『大嫌いなんて嘘なの…』『うん…』 本当は大好き… 美和は小さく笑った。
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