《第10章・想いの向こう側…②》

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佳那子はイライラと拓也へ電話をかけた。 『美和ちゃん明日H高へ両親と行くらしいわよ』 『明日は仕事が立て込んでるから無理、っていうか姉貴やけに詳しいじゃない』『さっき美和ちゃんと電話していたから知ってるわ』『ふぅん…姉貴とはシックリ関係が続いてるんだ。一緒に温泉旅行行った仲だもんね。美和の裸まで見ちゃって…』 『拓也は女湯には入れないでしょ、やけに温泉旅行と美和ちゃんの裸にこだわるわね』 拓也はビールを半分飲んでタンッとテーブルに置いた。 『男なら誰でも好きな女の裸は見たくなる(照)…っていうか美和は姉貴には素直なんだ。H高への事喋っててあたしにはスルーだし、黙るしっ!悔しいったら』『明日は何するの?って聞いたらH高に行くって言っただけよ。特別に話を聞いたわけじゃないわ。 大人なんだから寛大になりなさいよ、まったく! 美和ちゃんは恋愛経験がないんだからつまらない意地の張り合いを捨てて、上手くリードしてあげなさい』『成瀬にも同じような事言われた』 『成瀬の方が拓也より大人って事よ、まったく!今の拓也は思春期の恋を見てるようだわ。恋愛が初めてなわけないでしょ』 『成瀬よりガキですよ』 『可愛くないっ!部屋の掃除を内緒でする美和の気持ちをよく考えてみなさい。じゃあね』 『姉貴っ』 切れた電話、拓也は携帯をジッと見て部屋を見渡した。 【部屋の掃除を内緒でする美和の気持ちを考えてみなさい】 美和に電話をかけてみる。1分…2分… 『あたしだと出ないじゃない!まだ避けてんのかしら!美和なんかH高でも何処へでも行って…行って…』拓也はそれ以上言う事が出来なかった。 その頃、美和は避けるどころか昨夜寝つけなかった分寝はじめていた。 夜中『わっ!』…目を覚ました美和は唇に手を当てドキドキしていた。 『昼間の夢のリアルなキス…思い出しちゃったのかまた夢に出てきちゃった…』美和は電気を付けテーブルに手を伸ばし、シュシュを取って左手首にはめてジッと見ていた。 『佳那子さん…私…』 【諦めます】そう言った私に佳那子さんはこう言ったの。 【拓也を信じてあげなさい】と… 『だけど彼女から松本さんを奪うなんて私には…』 よそう…また眠れなくなる… 『信じてあげなさい…彼女の存在が散らついて出来ないよ…冷たくするのは嫉妬してるから? 恋ってしんどいな…』 美和はCDを1枚取り音量を下げ布団に横になりながら聴いていた。
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