《第10章・想いの向こう側…②》

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『何してんの?たしかS高?』『今から遊ばない?暇してんだ、俺ら』 見られてる気がしたのは本当だった事…それは、何㍍か向こうから3人組の男子の話声がして私は振り向いた。 無言で首を横に振りバス停の時刻表を指さした。 バス早く来て! 暇そうにした男子が私の方へ少しずつ近寄ってくる。 クラクションが鳴り私の名前を呼ぶ声に安堵の表情を浮かべ、車へとかけよる。『藤永さんっ!』 『乗って!バス停だから長く停めていられないから』ドアを閉めると男子達が悔しそうに私を見て、ドアを叩こうと手をあげた。 『心配して回り道して寄って見れば…』 『どうして?私がここにいるって知って…』 『佐々木さんと大家さ…美和ちゃんのお母さんが話してるのを、あたし聞いてたから。近くに友達の家もあるから回り道したのよ』 『助かりました』 風紀委員や男子とか…いろいろな意味で本当ありがたく感謝しなくちゃっ。 『どうだった?誰か生徒に会った?部活やってる人達がいるでしょ』 私は事の経緯を話すと、藤永さんはため息を付きこう言った。 『ネットに書き込まれると何処にいても一緒なのよ。それでも転校する気? あたしのリメイクのスケジュールもそれによって変わるのよ』 『風紀委員の人だけしか会っていないから何とも…言えない…』 『まるっきり違う環境から1からやるとなると、甘える人いないからホームシックは絶対よね』 『1から?私S高に友達いないしH高に行っても一緒です』 『両親や飼い猫のミロちゃんに会える機会も減るのよ』 『寂しいです…』 『あたしや松本さん、菊地さん、佐々木さんは?寂しくないの?』 寂しい… 寂しくてたまらない… 『………』 『寂しくないの?あたし達ってそんな軽い存在なの?松本さんは?たぶんあたしよりか、佐々木さんよりか心配してると思うけど?』つらくなるから言わないで… 『………』 藤永はため息をついた。 家に着いたのは4時30分を過ぎていたが、まだ陽射しがありミロと散歩に出かけた。 『ミロともあんまり会えなくなっちゃうね…付いてくる?H高の寮まで…』 家とマンションのまわりをグルッと一周し家に入る。洗濯物を入れてたたみミロにカリカリと水をあげて、藤永さんの部屋へと走っていった。 『お礼に掃除(笑ごま)』 『掃除したいのは隣でしょ、そして美和ちゃんの心』私はごみ袋を手に藤永さんを見た。 【掃除したいのは隣でしょ】
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