《第10章・想いの向こう側…②》

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松本は何日間かホテルへ宿泊しての仕事の為に、美和へ電話・メールする事も出来ずにいた。 藤永はマンション駐車場に松本の車がない事に、泊まり込みの仕事だとわかってはいた。 だけどH高に転校する意思をまげない美和には、松本しか説得する人はいないと何度かメールを打った。 友達として?掃除の為に?リメイクの為に? おそらく藤永には美和の存在はすべて当てはまるらしいけど。 佐々木は美和の母親と仕事先やプライベートで事の成り行きを聞いていた。 プライベート…たとえばごみ出しに行った先、おかずのお裾分けに吉井家に行ったりした時に。 そんな時に藤永や松本が駐車場にいたりして美和の様子を聞かれたりしていた。 菊地は松本と美和の恋路を黙って見守っていた。 営業先のひとつである美和の父親が勤める会社に出向いた時には、お昼等一緒にうどんを食べながら美和と松本の話は出ないかと気にしていた。 美和は迷っていた。 会った生徒が1人だけとはいえ《吉井美和の名前は書き込みにより知れている》という事に不安感があり、なかなか結論を出せずにいたから。 そんな時には藤永の部屋にお邪魔し気分転換にごみの仕分けや掃除をしたりしていた。 松本に電話したいがやはりあれから電話出来ないでいる。 そんな中、美和はバスでいつもの街に買い物に出かけていた。 制服を着ていない私服姿であっても、『S高の吉井美和』だと好奇の目で見られる事にため息をつきながらバスで帰る中で結論を出そうとしていた。 『私服姿でも知らない男子に追いかけられるなんて…私この街にいない方が良いのかもしれない。 どうせ1からやり直すなら他の街・他の学校の方が』追いかけられすりむいた膝をさすりながら美和は家へと歩いていた。 明後日は7月最後の日、結論を出さなきゃ。 『美和、決めたの?』 『うん、転校する。明日H高に行くから』 『そう、お母さん昼からシフトを代わってもらって美和についてくから』 『ううん、良いよ。付き添いのH高、明後日のつもりでいたんでしょ。 明日は※※先生と約束してるわけじゃないから行くかどうかもわからないし、お母さん仕事休まなくて良いよ』 夕食前にそんな話をしていた。 10時過ぎ、佳那子さんから電話があった。 『そう、拓也には相談しないで決めたの。 美和ちゃんにとって拓也は何なのかしらね』 佳那子は拓也の気持ちの事を思うと、2人のその後を案じた。
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