ep.1 出会い

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橘さんと出会ったのは、同じサークルの後輩が開いた、 面識のない男と女がお酒を飲み食いしながら話をする、 俗に言う合コンに参加したときのことだった。 眉間にしわを寄せながら煙草をずっと吸っている。 あきらかに機嫌が悪そうだ。 好みのタイプがいなかったのか。 それとも数合わせかなんかなのか。 あ、煙草二箱目突入。 結構強いの吸ってんるんだな。 そんなに吸ってどうするんだ。 煙もくもくなっちゃうよ。 みんな文句言わないか、そうだよな。 だって、喫煙席なんだもん。 てか、この人だけじゃん煙草吸うの。 そんなにこの人の立ち位置高い感じなのか。 はあ。早く帰りたい。家に恋人待ってんのに。 こっちだって数合わせだってのに。 早く、会いたい。 会って、触れて、抱きしめて、それから、それから。 「全然飲んでないじゃん。」 橘さんと話したのは、 その瞬間だった。 やっぱかっこいいな。 やっぱかっこいいよ。 ずっとモテてきたんだろうな。 きっと、そうやって何人もの女を抱いてきたのだろう。 「指、綺麗だね。」 橘さんに触れたのは、 いや、触れられたのは その瞬間だった。 「あなたのほうが綺麗ですよ。」 俺の名前は、斉藤了(さいとうりょう)。 あだ名は、りょうちゃん、りょう、たまに何故か了解って呼ばれる。 たまにおつとも呼ばれる。 了解だから、お疲れじゃんって。 だから、おつ。 なんだそれ。 あなたの名前は橘凌(たちばなりょう)。 あだ名は、たちばな、たっちゃん、たちりょ。 たまにたっちー、たっつん。 おなじ名前の音。 でも違うあだ名。 そして、俺の恋人の名前は、 橘隆(たちばなたかし)。 俺は、ゲイだ。 カミングアウトは、まだしてない。 今思えば、 この時すでに、あなたの手の中に 落ちていたのだろうか。 to be continued...
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