灰かぶりの花嫁のなみだ

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家から閉め出されてしまったアタシは、悲しくなりまして伊豆急行下田駅の待ち合い室のベンチにひとりぼっちで座って、頭を抱えて泣いていたのでありました。 家から閉め出されたことについては、小さい時から数えきれないほどありました。 家の中に母がいても、昼ドラに夢中になっていたり長電話をしていたりするときが多かったので、やっと家に入れた時、母は『こんな遅い時間帯までどこへ行っていたのよ!?』とアタシに対してあつかましく言いまして、アタシをなじるだけなじっていたのでありました。 そんなことばかりが積み重なっていましたので、母とアタシの関係は少しずつキハクになって行きました結果、冷え込みは一気に加速をしていたのでありました。 サイアク… こんなことになるのだったら… 高校をやめた後に下田市を出るのだったわ… やっと家に入れたのはそれから5時間後のことでありました。 アタシは母に『運送会社をやめて結婚がしたい…』と泣きながらコンガンをしましたが、母は『やめられたら困る…』と言う表情をしましてアタシにあつかましくこう言って来たのでありました。 「困るわよ…ゆきみが運送会社をやめたらどうなるのよ…お父さんは人事異動で遠方の支店勤務の辞令が下りるかもしれないのよ…お姉ちゃんはもうすぐ結婚をして市役所をやめて横浜に行くのよ…お母さん外へ働きに行くのがイヤだから専業主婦をしているのよ…ゆきみが働いてくれないと困るのは家なのよ!!分かっているのかしら!?」 母の言葉に対しまして、アタシは「何なのよ一体!!アタシばかりに負担を押し付けるなんてあんまりだわ!!」と泣き叫びながら言い返しました。 この時でありましたが、アタシと家族の間に生じていました溝は、さらに拡大が進んでいましたので次第にアタシは家族との距離が広がりました。 その頃姉は、ゆういちろうさんと挙式披露宴の打ち合わせや婚礼家具や婚礼家電を見たりしながら結婚準備を楽しんでいました。 この時姉は、幸せの絶頂期でありました。 3月半ばに、姉とゆういちろうさんの挙式披露宴の日取りが決まりましたが、この時から悲劇は始まっていたのでありました。
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